法人化で後悔しないために知っておきたい事!デメリットやタイミング
法人化してから後悔する事のないよう、今回は、法人化のリスクやデメリット、法人化するタイミングや目安など、事前に知っておきたい事についてご紹介させて頂きます。
開業(創業)や会社設立 、個人事業主から法人成りを検討されている方の中には『法人化してから後悔する事にならないか?』と不安を抱えている方も多いかと思います。
今回は『法人化する前に知っておきたい事』について分かりやすくまとめましたので、法人化に関して迷っている方は是非参考にして頂ければと思います。
このページで分かる事
法人化を検討するなら、まずは法人化する事で発生するリスクやデメリットについて理解しておく必要があります。
法人化する事で発生する費用には主に以下のようなものがあります。
思っていたより費用がかかってしまったと後悔しないように、事前にしっかりと把握しておきましょう。
会社設立時や個人事業主から法人成りする場合には、まず登記手続きが必要です。
その際に発生するのが『定款の認証代・謄本手数料・登録免許税』などの費用です。
合同会社か株式会社かによっても異なりますが、会社設立時にかかる費用はおよそ25万円程度です。
その他にも資本金の準備が必要です。
資本金が1円でも会社を設立する事は出来ますが、今後の経営に備えて運転資金の3カ月程度を目安に考えておくと良いでしょう。
法人化すると社会保険への加入が必要になり、保険料の半額分を会社で負担することになります。
従業員がいる場合は、従業員の社会保険料分も半額負担することになるため、従業員が多ければ多いほど負担する費用は増えます。
この社会保険料が大きな負担になる事があるため、従業員の『 給料+社会保険料負担額 』がどれくらいになるのか、事前にしっかりと把握しておく必要があります。
会社が負担する社会保険料負担額の目安としては、従業員の給与に対して約15%程度、給与30万円の場合で年間にすると約54万円程度の費用が必要という事になります。
法人が支払う税金の中で、法人住民税は会社が存在していれば課される税金です。
そのため、たとえ経営が悪化して赤字になった場合でも、支払わなくてはなりません。
「均等割負担」 により、会社の資本金や従業員数などにより税額は異なりますが、最低でも年間約7万円の税金は必ず発生します。
法人化すると、会社経営していく上で発生する維持費についても考えておく必要があります。
オフィスの賃貸料や光熱費、書類作成などにかかる費用など毎月発生する費用に加え、専門家と契約する場合や業務を依頼する場合には、その分の報酬なども必要になっていきます。
税理士と顧問契約する場合の費用相場は、年間で25万~35万円程度ですが、会社の業種や規模、依頼する事務所や業務内容などによっても異なるため、それ以上の費用が必要になる場合もあります。
続いては、法人化する事で増える負担です。
会社を設立する際の準備、またその後、会社を運営していく上で必要になる業務などもあります。
後で詳しく解説しますが、会社設立時には主に以下のような準備や手続きが必要になってきます。
手続きには期限もあるため、事前にしっかりと準備しておく必要があります。
法人化すると、会計処理や税務処理、事務処理などの業務が増えます。
毎月の会計処理や帳簿作成だけでなく、決算期が終了すると決算書の作成や税務署への申告なども必要です。
個人事業主の時と違って、作成する書類や手続きなども複雑になるため、手間や時間が取られ大きな負担になる事もあります。
法人化のデメリットについて理解した上で、続いては個人事業主のメリット・デメリット、また法人化にはどのようなメリットがあるかについてもご紹介します。
前述のように法人化にはデメリットもあるため、個人事業主の方がメリットが大きいようなら法人化しない方がいい場合もあります。
個人事業主のメリットとしては主に以下のような事があります。
個人事業の場合は、会計処理や税務申告、事務手続きなどがそれほど複雑になることはありません。
個人事業では毎年確定申告を行いますが、経理ソフトなどを利用して自分で行っている人も多いでしょう。
また、税理士に依頼するケースでも、法人に比べて税理士への報酬額は安くなる場合がほとんどです。
法人では法人税、個人事業では所得税の支払いが必要でそれぞれ税率が異なります。
所得税は『 超過累進税率 』となるため、 売上や利益が増えるごとに税率が高くなりますが、 一定の所得(利益)までは法人より税率が低くなります。
個人事業の場合、従業員数が5人以上でなければ社会保険へ加入する義務はありません。
社会保険料は半額分が会社の負担となりますが、国民健康保険や国民年金は個人での支払いになります。
法人化すると強制的に社会保険へ加入する事になるため、従業員を増やすつもりがないなら、個人事業のままの方がその分の費用負担を少なくする事ができます。
個人事業主にもデメリットがあり、売上や所得の状況、事業規模を拡大したい場合においては、法人化(法人成り)する方がメリットが大きい事もあります。
続いて、個人事業主のデメリット、法人化のメリットについて見てみましょう。
個人事業主だと法人に比べて社会的信用度は劣るため、以下の面において不利になる事があります。
上記のように、個人事業主と法人では社会的信用度が違ってくるため、事業規模を拡大したい、また従業員を増加したい場合は法人の方が有利になります。
前項でも述べたように、個人事業主が支払う所得税は『 超過累進税率 』となるため、 売上や所得が多いほど税率が高くなります。
所得税と住民税合わせると税率は最大55%まで上がっていきます。
一方、法人が支払う法人税は税率の増え幅が少なくほぼ一定率、 課税対象の所得が800万円超でも23.2%です。
そのため、課税対象となる所得額(利益)が多いほど、納める税金は法人の方が少なくなります。
個人事業主も法人も、事業に関わる費用はすべて必要経費として計上することができます。
ただ、法人の場合は経費として計上できる範囲がさらに広くなります。
個人事業主の場合、売上から経費を差し引いた分が『事業所得=収入』となり、自分の収入を経費として計上する事は出来ません。
しかし、法人の場合は自分の収入も給与所得となり、経費として計上することが可能(給与所得控除の対象)です。
その他にも、個人事業主には認められていない『 賞与・退職金・出張手当』なども経費として計上することが出来ます。
法人化(法人成り)は、メリット・デメリットを踏まえた上で、それぞれの状況に応じて判断する事が大切です。
では、個人事業主が法人成りする場合、どのようなタイミングで法人成りすればメリットが大きくなるのか?目安となる時期についてご紹介します。
個人事業主が支払う所得税の税率が33%になるのが課税所得900万円です。
法人税の税率は年800万円超で23.2%、法人に比べて個人事業主の方が税負担が高くなります。
そのため、課税所得900万円を超える前に法人化を検討するのもひとつの目安です。
【個人事業主/所得税の速算表】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
個人事業主の所得税は超過累進税率により 課税所得が増えればさらに税率が高くなります。
今後、所得が増える見込があるなら、このタイミングで法人成りすると節税面においてメリットが大きくなるでしょう。
個人事業主で年間の売上高が1,000万円を超えると、消費税課税事業者となり2年後に消費税の納税義務が発生します 。
しかし、個人事業主から法人成りした場合、過去2年間の売上高はないことになります。(※ 個人事業主と法人は別人格として扱われます。)
そのため、年間の売上高が1,000万円を超える直前で法人化すれば、消費税の納税義務がさらに最長2年間免除される(※消費税免税事業者の対象となる)ことになります。
消費税の節税面で考えると、年間売上高が1000万円を超える時というのもひとつのタイミングです。
ただし、法人成り後に2年間消費税の免税事業者となるには、以下の要件を満たしている必要があります。
※設立1期目が7ヶ月以下の場合は、1~3の要件を満たしていなくても免税事業者の対象となります。
新規事業の開拓や取引先の増加など、事業規模を拡大したい時も、法人化を検討するひとつのタイミングです。
個人事業主のデメリットでもお伝えしたように、個人事業主では社会的信用度が低くなるため、事業規模を拡大するにあたっては不利な点が多くなります。
法人化すると、取引先の増加、運転資金の確保(金融機関からの融資)、人材の確保などにおいて有利になり、法人化する方がメリットが大きいと言えます。
ただ、従業員を増やす場合は、社会保険料の負担額も考慮する必要があります。
個人事業主から法人成りを検討する場合に、必要となる準備や手続きなどについても気になる所かと思います。
ここでは、法人化に必要な準備・手続き・期間など法人化するまでの流れについてご紹介します。
法人化する時、また法人化した後すぐに必要になる手続きには主に以下のようなものがあります。
法人化する際に必要となる書類の作成や手続きなどは、専門家(税理士・司法書士・行政書士)に依頼することも可能です。
法人化した後に提出する書類にはそれぞれに期限が設けられているため注意が必要です。
法人化するまでのおおまかな流れとかかる期間は以下の通りです。
登記申請の手続きが完了するまでにおよそ1週間~10日程度、法人化の手続き完了(会社設立)までには、およそ2週間~3週間の期間が必要です。
法人化のタイミングや時期、手続きや流れについては、こちらの記事『 法人化のタイミングまとめ【税理士監修】個人事業主から法人化※時期・売上目安 』で詳しくご紹介させて頂いていますので、そちらも是非参考にして下さい。
万が一、法人化した後に『やっぱり個人事業主にしておけばよかった』と後悔した場合には『個人成り』という方法があります。
ここでは、法人化から個人成りする場合の手続きや流れについてご紹介します。
個人成りの大まかな流れ、必要な手続きは以下の通りです。
個人事業主に戻すには、まず法人の廃止手続きが必要になり以下の2種類の方法から選びます。
会社を解散して再建・債務などを精算する場合は、『 解散の登記 』『 清算人選任の登記 』『 清算完了の登記 』が必要です。
解散の日から2週間以内に法務局で手続きを行う必要があり、登録免許税などの登記費用(41,000円 )なども必要になってきます。
会社を休業する場合は、税務署や市区町村に『移動届出書』を提出、従業員がいる場合は『給与支払事務所の廃止届出書』の提出も必要です。
休業の場合は再び法人に戻る事が出来ますが、自治体によっては法人住民税(年間7万円)の支払い義務が生じます。
法人の廃止手続きが完了すれば、続いて個人事業の開業手続きを行います。
手続きの際は、主に以下のような書類が必要になります。
※業種や希望する特例によっても異なります
上記の書類を税務署に提出します。
新たに個人事業を行う事になるため、会社の資産や権利なども個人事業に移転する必要があります。
上記のような手続きも必要になってきます。
法人化すべきかどうかの判断やタイミングは難しく、また法人化するとなると準備や手続きが複雑で手間がかかります。
もし法人化に関して不安があるなら、専門家へ相談するのもおすすめです。
法人成りや会社設立時に相談や手続きなどを依頼できる専門家は、『税理士・ 司法書士・行政書士』です。
会社設立時の書類作成や手続きなどに関しては、それぞれで代行できる業務が以下のように異なります。
上記のように異なる役割がありますが、どの士業に依頼しても他の士業と提携している場合が多く、会社設立手続きに関しての相談にはいずれも対応しています。
ただ、税理士なら会社設立時だけでなく、会社設立後の決算などの会計処理、節税に関する事などもサポート可能です。
そのため、会社を経営していく上での相談もしたいという事なら、法人成りや会社設立時のタイミングで税理士と契約するのもおすすめです。
まずは、税理士に相談できる内容、依頼できる主な業務について以下にまとめました。
上記をご覧頂くと分かるように、税理士は会社設立時の開業届や税務書類の作成だけでなく、創業融資のサポート、助成金や補助金の申請などにも対応しています。
法人成りや会社設立時には、様々な準備や複雑な手続きだけでなく、資金の調達なども必要になってくるでしょう。
そういった場合に、融資に関する相談ができ、助成金や補助金の申請も可能な税理士がいれば安心です。
税理士との顧問契約には費用も発生しますが、会社設立後にも経営や節税に関する相談が出来るのは大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
※顧問契約を条件に会社設立手続きを無料、または安い報酬で引き受けている税理士事務所もあります。
会社設立や法人化の際に、税理士に依頼すべきかや顧問契約するメリットなどについてはこちらの記事『【会社設立・法人化】税理士は必要?不要?メリットとデメリットを比較 』で詳しくご紹介させて頂いていますので、そちらも是非参考にして下さい。
法人化するかどうかは、法人化のデメリットをしっかり把握した上で、現在の所得や経営の状況、今後の事業計画などを考慮し判断しましょう。
個人事業主から法人成りを検討されている場合は、今回ご紹介した「法人化した方がいいタイミングや目安」なども参考にして頂ければと思います。
自分では判断できない、どうしても不安という場合は、後悔しないためにも専門家へ相談することをおすすめします。