定期同額給与(役員報酬)の注意点!※損金算入の要件・届出・改定時期など
今回は『 定期同額給与(役員報酬) 』について、知っておくべき事や注意点など詳しくご紹介させて頂きます。
定額同額給与(役員報酬)は、バランスよく設定することで高い節税効果が見込めます。
しかし、税務上の取り扱いについて正確に把握しておかないと、損金算入として扱われず、多額の税金が発生してしまう可能性もあるため注意が必要です。
今回はそんな『定期同額給与(役員報酬)』に関して注意すべき事を分かりやすくまとめてみました。
このページで分かる事
まずは、定期同額給与(役員報酬)とはどのようなものなのか、損金算入が認められる条件など分かりやすく解説します。
定期同額給与とは、役員報酬の一種で、必要条件を満たしていれば損金に算入することができます。
損金算入するための必要条件は以下の通りです。
つまり、定期同額給与とは『毎月決められた支給時期に同じ金額を支払う役員報酬』のことです。
損金算入できる役員報酬には、定期同額給与以外にも以下の2つの役員報酬があります。
事前確定届出給与とは、所定の時期に確定した金額を支給する旨を定め、期限内に税務署へ事前に届出をして支払う給与のことを指しています。
例えば、年に数回の賞与など予め決定している報酬であれば、事前に届出をしておく事で損金として算入することができます。(※定期同額給与と併用することも可能)
ただ、赤字になった場合でも決められた金額を支給する必要がある、また事業年度ごとに届出する必要があるなどのデメリットもあります。
業績連動給与とは、会社の業績(利益)を指標として金額が算定される給与のことを指しています。
事前確定届出給与や定期同額給与とは違って、金額が確定しておらず、会社の業績(利益)に連動した給与になります。
損金として算入するには、同族会社(経営者並びにこれらと特殊な関係にある株主が出資金額の全部またはほとんどを所有している会社)でない事、 有価証券報告書に記載されている事、支給額の算定方法を開示する事などの要件を満たす必要があります。
定期同額給与(役員報酬)は、決められた期限までに支払いを開始しないと損金に算入されないため注意が必要です。
定期同額給与(役員報酬)は、事業年度を開始した日から3カ月以内に決定し、支払いを開始する必要があります。
そのため、会社設立日が4月1日である場合(3月決算の会社の場合)は、3カ月が経過する6月30日までに支払わないと損金に算入されなくなります。
定期同額給与(役員報酬)の支給額は、会社設立時に定款に定めておく、または株主総会の決議により決定します。
また、会社設立時に決定した役員報酬は、変更を行わない限り同じ金額を支払い続けることになります。
続いては、定期同額給与(役員報酬)にする場合の手続きについて、会社設立時と定期同額給与(役員報酬)の変更時に必要な手続きをまとめました。
定期同額給与(役員報酬)にする場合、定款や議事録に記載する必要はありますが、事前確定届出給与とは違って所轄の税務署への届出は必要ありません。
法人化した場合には、社会保険の加入が義務付けられているため、会社設立時には社会保険への加入手続きが必要です。
また、定期同額給与(役員報酬)を受け取る場合は、役員も従業員と同じように社会保険料を負担する必要があります。
会社設立時の社会保険料の手続きは、会社設立から5日以内に所轄の年金事務所へ必要書類を揃えて提出します。
社会保険料の金額は、毎年4月・5月・6月に支払われた報酬額に基づいて算出され『標準報酬月額』として決定されます。
この『標準報酬月額』が増減する場合には、年金事務所に『被保険者報酬月額変更届』を提出する必要があります。
定期同額給与(役員報酬)の金額を変更した場合は、標準報酬月額も増減する可能性があるため年金事務所へ届出を行いましょう。
定期同額給与(役員報酬)を変更する事は可能ですが、期限が決められています。期限内に行わなければ変更が認められないため注意が必要です。
定期同額給与(役員報酬)決定する場合と同じく、事業年度の開始から3カ月以内に株主総会を開催して議事録を作成し、報酬額の変更を行う必要があります。
3月決算の会社の場合だと6月30日までが期限となります。
期限を過ぎると前年度と同額を支給することになり、変更後の定期同額給与(役員報酬)は認められず、損金として算入できないので注意が必要です。
定期同額給与(役員報酬)の変更『給与改定』が認められるのは、以下の3つの要件のいずれかに該当する場合です。
事業年度開始の日から3ヵ月以内に、定時株主総会の決議などにより改定された場合。
役員の地位の変更(昇格した場合など)や、職務内容に重大な変更があった場合。
会社の経営状況が著しく悪化し、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情などがあった場合。
基本的に、定期同額給与(役員報酬)の金額は、事業年度の途中で変更することはできません。
ただし、以下のようなケースでは減額や増額が認められる場合があります。
前項でご紹介した給与改定が認められる3つの要件のうち、③業績悪化改定事由による改定の場合は、事業年度開始から3カ月経過後でも認められる場合があります。
具体的には以下のようなケースが例として挙げられます。
前項でご紹介した給与改定が認められる3つの要件のうち、②臨時改定事由による改定の場合は、事業年度開始から3カ月経過後でも認められる場合があります。
具体的には以下のようなケースが例として挙げられます。
基本的に、定期同額給与(役員報酬)の変更は、事業年度開始から3ヶ月以内の1回のみ認められています。
ただし、定期同額給与の事業年度の途中での変更については、変更回数の回数制限の規定はありません。
つまり、前項で述べた給与改定が認められる要件を満たしているのであれば、事業年度の途中で何回でも変更することが可能という事になります。
今回は、定期同額給与(役員報酬)について、改定時期や注意点など詳しくご紹介してきました。
定期同額給与(役員報酬) は税務上の取り扱いについて正確に把握し、規定に沿って支給しなければ損金として算入されません。
また、業務実績が伴わない高額な支給額を設定すると、税務調査により適正な報酬額ではないと判断され、損金算入が認められないケースもあります。
定期同額給与(役員報酬)の金額の決定(変更) は、以下の点に注意しながら慎重に判断しましょう。
定期同額給与(役員報酬)の決定は、基本的に事業年度開始から3カ月間しかなく、一度決定すると次の事業年度まで変更することができません。
また、適切な報酬額を設定しないと、多額の税金が発生したり会社の財務状況の悪化につながる可能性もあるため、不安な場合は税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
経営者の方が、収益を上げるための事業に専念できるよう、お手伝いさせて頂くのが私たち税理士の仕事です。 安心して効果的に節税対策を行いたいという方は、是非当事務所へお気軽にご相談下さい。