【会社設立・法人化】必要な準備とかかる費用を詳しく解説!
今回は『会社設立・法人化』に必要な準備について、会社設立時や設立後にかかる費用、資本金の目安など詳しくご紹介させて頂きます。
個人事業主から法人成りする場合や、新たに会社を設立する際には、法人登記の費用や資本金などの準備が必要、また、法人化する事で発生する費用もあります。
今回はそんな『法人化の費用』に関して、以下の点についてまとめてみました。
・会社を設立するにあたって必要な準備や費用は?
・法人化を専門家に依頼する場合と自分でする場合の違いは?
・会社を設立する際の資本金の目安や決め方は?
このページで分かる事
まずは、会社設立(法人化)に必要な準備について解説していきます。
会社を設立するにあたっては、以下の事前準備や手続きが必要になってきます。
まず、会社設立の手続き前に会社の基本事項を決めておく必要があります。
決めておくべき事項は以下の通りです。
会社名が決定すれば、会社の印鑑「実印・角印・銀行印」を作成しておきましょう。
定款は、会社の概要を文書にまとめたもので、会社設立時には必ず作成する必要があります。
また、定款には必ず記載すべき絶対的記載事項があります。
定款の作成が完了すれば、公証役場で公証人による定款の認証を受けます。
定款認証の際には、定款以外にも
などの準備が必要です。
※合同会社の場合は定款の認証は不要です。
資本金は定款認証が完了するまでに準備しておく必要があります。
資本金の額については後で詳しく解説しますが、法律上は資本金1円でも会社の設立は可能となっています。
定款認証が完了したら、資本金を発起人の銀行口座に払い込み、払い込み証明書を作成します。
払い込み証明書には、
などを記載する必要があり、また振込内容が記載された通帳のコピー(※ネットバンキングの場合は記載されたぺージを印刷したもの)を用意する必要があります。
払い込んだ資本金は、会社名義の口座を開設した際に、個人口座から法人口座へと移行します。
払い込み証明書の作成が完了すれば、続いて登記申請の準備をします。
登記申請は法務局で行いますが、申請時には以下のような書類が必要になってきます。(※登記内容によって必要書類も異なります。)
など
上記の書類を作成し、法務局の窓口で登記申請の手続きを行います。
登記申請が完了するまでに、およそ1週間から10日程度かかります。
個人事業主から法人化する場合の『法人化のタイミング』、法人化する前に知っておきたい『法人化のリスクやデメリット』について、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも是非参考にして下さい。
➡ 法人化のタイミングまとめ【税理士監修】個人事業主から法人化※時期・売上目安
➡ 税理士監修【法人化で後悔する?】リスク・デメリットまとめ!
続いて、会社設立(法人化)に必要な費用ですが、会社の形態によって設立時の費用は異なります。
設立できる会社の種類は、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」 の4種類に分類され、それぞれの会社形態によって設立費用や出資責任などが異なります。
株式会社 | 国内や先進国でも多い一般的な会社形態。 社会的信用度も高く、出資者責任が有限である 。 会社が出資者に対して「株」を発行、出資者が「株主」となり、『会社の経営に参加する権利』『配当を受ける権利』などが与えられる。 |
合同会社 | 2006年の会社法の改正により、設立が可能となった会社形態。 株式会社と違って、出資者と経営者が同一となる。 設立費用が安く、出資者全員が有限責任社員となるため経営の自由度が高いが、信用度は株式会社より劣る。 |
合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員からなる会社形態。 会社の設立には、出資者が2人以上必要となる。 設立費用が安く経営の自由度は高いが、対外的信用度が低い。 |
合名会社 | 出資者全員が無限責任社員からなる会社形態。 設立費用が安く経営の自由度は高いが、無限責任であるため経営におけるリスクが高い。 |
上記の4種類の会社形態のうち、最も設立費用が高くなるのが株式会社ですが、社会的認知度や信用度が高い、融資を受けやすい、上場が可能などのメリットがあります。
一方で、社会的認知度や信用度は株式会社より劣るものの、設立費用が安く、経営の自由度が高い合同会社の設立も近年増加しています。
会社法の改正で合同会社の設立が可能になってからは、メリットの少ない合資会社・合名会社の設立は非常に少なくなっています。
株式会社を設立するにあたって、法人登記の際にかかる費用は、法定費用やその他の費用を合わせておよそ25万円程度が相場です。
定款認証や登記手続きの際に、公証役場や法務局に支払う法定費用(実費)、書類の取得や印鑑作成などにかかる費用、資本金などの費用が必要になってきます。
定款認証手数料 | 50,000円 |
定款収入印紙代 | 40,000円 |
定款の謄本手数料 | 2,000円 |
登録免許税 | 150,000円 |
書類取得費用 | 約300円~450円×必要枚数 約500円~600円×必要枚数 |
印鑑作成代 | 約5,000円~30,000円 |
資本金 | 1円以上 |
合計 | 約250,000円 |
公証役場での定款認証の際に50,000円(※資本金300万円以上の場合)の手数料が必要になります。
資本金の額が300万円未満の場合、手数料は以下の通りです。
定款に貼る収入印紙代として40,000円が必要になります。
これは定款を紙で作成した場合であって、定款を「電子定款」にする場合には収入印紙は不要となるため、この印紙代はかかりません。
ただ、電子定款を作成するにあっては、専用機器やソフトなどが必要となるため、その機器などを準備する費用が必要になってきます。
法人登記時には、定款の謄本を作成してもらう必要があり、その手数料としておよそ2,000円程度(250円×ページ数× 2冊 )かかります。
登録免許税は、登記申請の際に法務局に支払います。
税額は資本金によって異なり『資本金×0.7%』となっていますが、『150,000円が下限』となっているため、最低でも150,000円が必要になります。
登記申請の際は、印鑑証明書や登記事項証明書などの書類取得費用も必要になってきます。
取締役が複数人いる場合、印鑑証明書は人数分必要になります。
会社設立時には、3種類( 実印・角印・銀行印 )の印鑑を作成しておく必要があり、その費用も必要になってきます。
お店によって価格に違いはありますが、およそ5,000円~30,000円程度が相場です。
資本金は、前述のように1円でも会社の設立は可能です。
しかし実際には、今後の会社を運営していくにあたって元手となる資金であるため、ある程度の金額は準備しておく必要があります。
※資本金の金額については後で詳しく解説します。
合同会社を設立するにあたって、法人登記の際にかかる費用は、法定費用やその他の費用を合わせておよそ11万円程度が相場です。
合同会社は、株式会社と違って定款の認証を受ける必要がないため、その分会社設立にかかる費用が少なくなります。
また、登録免許税の支払い下限額も株式会社より低く設定されています。
定款収入印紙代 | 40,000円 |
登録免許税 | 60,000円 |
書類取得費用 | 約300円~450円×必要枚数 約500円~600円×必要枚数 |
印鑑作成代 | 約5,000円~30,000円 |
資本金 | 1円以上 |
合計 | 約110,000円 |
株式会社の設立と同様に、定款に貼る収入印紙代として40,000円が必要になります。
こちらも電子定款の場合には、印紙代は不要となります。
合同会社の場合、登録免許税は『60,000円が下限』となっています。
そのため、最低でも60,000円の費用が必要になります。
株式会社の設立と同様に、法人登記の際に印鑑証明書や登記事項証明書などの書類取得費用が必要です。
株式会社の設立と同様に、印鑑作成費用として、およそ5,000円~30,000円程度の費用が必要になります。
株式会社の設立と同様に、1円以上の資本金の準備が必要です。
法人化すると、会社設立時だけでなく設立後にも固定費や維持費などの費用がかかります。
会社設立後にかかる費用について詳しく解説します。
法人化により発生する固定費には、「社会保険料」と「法人住民税」があります。
法人化すると、社会保険へ必ず加入しなければなりません。
社会保険料は、会社側が従業員の半額を負担することになるため、従業員の人数によっては、負担する費用も大きくなる場合があります。
会社が負担する社会保険料額の目安としては、従業員に支払う給与額の約15%程度です。
法人が支払う税金には、法人税・住民税・事業税・消費税・固定資産税などがあります。
このうち、住民税は利益額に関係なく毎年支払わなければならない税金(住民税均等割)です。
個人事業主だと、赤字の場合は住民税の負担はありませんが、法人の場合は赤字の場合でも、最低約7万円の費用が毎年発生します。
会社を運営していくにあたっては、維持費として毎月発生する費用もあります。
毎月発生する維持費としては、
などがあります。
それぞれの会社によってかかる費用は異なりますが、年間でどれくらいになるかをしっかりと把握しておく必要があります。
上記以外にも、株式会社を設立した場合には「決算公告費」「重任登記費用」「株主総会開催費」などの費用が発生します。
株式会社では、株主や債権者に決算を公開し、会社の財政・経営状況などを報告する決算公告を行います。
基本的に年1回、定期株主総会の後に行いますが、その際に費用が発生します。
かかる費用は公告の方法によって以下のように異なります。
役員が任期を終え、退任と同時に再就任(重任)する場合に必要となる登記を重任登記と言います。
重任登記は、決定してから2週間以内に行う必要があり、また登記漏れなどがあると過料が課させる場合もあるため、基本的には司法書士に依頼します。
その際に、依頼費用として約3万円~6万円の費用がかかります。
株主総会は、最低でも年1回は必ず開催しなければならないものです。
株主総会の開催で発生する費用としては、
などがあります。
ここまでご覧頂くとわかるように、法人化にはさまざまな準備や費用が必要になってきます。
ただ、会社設立時や設立後のサポートを専門家へ依頼することも可能です。
ここでは、法人化を専門家に依頼した場合の費用について詳しく解説させて頂きます。
会社設立時の書類作成や手続きなどを専門家に依頼した場合にかかる費用と、会社設立時、または会社設立後に専門家と顧問契約を結んだ場合にかかる費用の相場をまとめてみました。
会社設立時の書類作成や手続きは、主に「司法書士・行政書士・税理士」などに依頼する事が可能です。
それぞれの専門家によって代行できる業務は限られますが、基本的に他の士業と提携しているケースがほとんどです。
依頼する専門家によっても費用は異なりますが、およそ3万円~10万円程度が相場です。
税理士に依頼する場合、顧問契約が前提であれば、会社設立時の費用を無料、または安い費用で依頼できる場合もあります。
法人化すると、税務処理や会計処理など複雑な業務も増えるため、会社設立と同時に税理士と顧問契約を結ぶ方も少なくありません。
税理士の顧問契約料は、会社の規模や年商、訪問回数などによっても異なりますが、年間でおよそ25万~35万円程度が相場です。
金額的にも大きくなるため、税理士との顧問契約を検討する場合は、法人化でかかる費用としてしっかりと頭に入れておく必要があります。
前述のように、専門家に依頼した場合には依頼費用が別で発生します。
では、会社設立を自分でした場合と専門家に依頼した場合では、費用や手続きの面でどれくらいの違いがあるのでしょうか?
専門家への依頼費用の相場は、およそ3万円~10万円程度とお伝えしましたが、専門家へ依頼した場合には、定款認証の際に発生する「定款収入印紙代」の40,000円が不要となります。
基本的に電子定款で作成してくれるため、定款に貼る印紙代の費用がかかりません。
そのため、仮に会社設立の依頼費用が40,000円程度だった場合、設立時にかかる費用全体でみると、自分でする場合とほぼ変わらないという事になります。
また、税理士に顧問契約を前提に依頼する場合には、無料で引き受けてくれる所もあるため、会社設立の費用(法人登記の際にかかる費用)としては、専門家へ依頼する方が安くなる場合もあります。
※税理士との顧問契約料は発生します。
専門家へ依頼した場合には、以下のような会社設立に伴うあらゆる業務をサポートしてもらうことが可能です。
会社設立時は、必要な書類や手続きも多く、すべて自分で行うとなるとかなりの時間や労力が必要です。
専門家へ依頼すれば、手間や時間がかかる業務を任せる事ができ、書類や手続きの間違いを防ぐ事もできるため、手続き面での負担は大幅に軽減されます。
会社設立時や法人化で『税理士は必要か?』について、メリットやデメリット、契約するタイミングや費用など、以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらも是非参考にして下さい。
➡ 【会社設立・法人化】税理士は必要?不要?メリットとデメリットを比較
法人化の資本金について、具体的にどのように金額を決めるべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
最後に、資本金の平均額や決め方などについて詳しく解説させて頂きます。
資本金は、会社に出資したお金を指し、今後の会社を運営していくにあたって元手となる資金(運転資金)です。
また、資本金は会社の規模や信用度をはかる基準となるものでもあります。
そのため、あまりにも資本金額を低くすると、
など、将来的に会社に不利益が生じる可能性があります。
会社設立時の資本金の平均額はおよそ300万円程度、運転資金の3カ月程度が目安と言われています。
会社設立後、3カ月間利益が出なくても事業の継続に影響がない程度の金額を設定するのが一般的とされています。
資本金額を決める際の考え方、決め方のポイントを以下にまとめてみました。
前述のように、資本金は会社設立時から数ヶ月利益が出なくても、問題なく事業が行える額を設定するのが一般的です。
資本金の平均額はおよそ300万円程度と言われていますが、その会社ごとで毎月どれくらいの資金が必要となるかは当然違ってきます。
また、会社設立当初は、登記手続きに必要な費用に加えて、事務所の契約費用や設備投資にかかる費用、備品の購入費用や商品の仕入代金など、その会社によって初期費用も異なります。
そのため、初期費用がどれくらい必要かをまず計算した上で、安定して事業が行えるまでに必要な運転資金(3カ月~6カ月分)をプラスして考えると良いでしょう。
前述のように、資本金は社会的信用度をはかる基準となるものです。
融資を受ける場合や取引をする場合、金融機関や取引先はその会社の資本金で信用できる会社かどうかを判断します。
融資を受ける場合には、資本金の額を基準として融資限度額を決めるところも多いため、少ない資本金額を設定していると希望する融資が受けられなくなる可能性があります。
事業規模が小さく取引先も少ない、融資を受ける予定もない場合などは、資本金の額はあまり影響しないかもしれません。
しかし、将来的に会社の規模を大きくしていきたいと考えるなら、資本金額が今後の経営に影響する可能性がある事を考慮しておく必要があります。
資本金額によって税金面で影響があるのは、消費税と法人住民税です。
消費税は、資本金額により納付義務が以下のように異なります。
法人住民税は、資本金額により納付する金額が以下のように異なります。
上記のように、資本金が1,000万円を超えると、消費税と法人住民税の税負担が増えるため、1,000万円が資本金の額を決めるひとつのポイントとなります。
『法人企業で使える節税対策』については、以下の記事でも詳しく解説しています。法人の節税対策に関して不安がある方はこちらの記事も是非参考にして下さい。
➡ 個人事業主・法人向けの節税対策33選【2021年版】税理士が紹介!
許認可が必要な事業の場合、事業内容によっては、最低資本要件が決められている場合があります。
例えば、以下のような事業には要件が設けられています。
上記のように、 一定の資産がある事が許認可の要件として設けられているものもあるため、許認可が必要な事業の場合は事前に確認が必要です。
当事務所では、法人設立に関する相談、助成金や補助金のサポートなども承っております。法人化の準備や費用に関してお悩みでしたら是非お気軽にご相談下さい。