とりあえず会社を作るのはアリ?
今回は、『とりあえず会社を作るのはアリ?』について、会社設立の節税効果やメリット、リスクや設立手順などについて詳しく解説させて頂きます。
「とりあえず会社を作っておけば何かと有利になる?」そんな考えから法人化を検討する人が増えています。確かに、法人を設立することで多くのメリットがあるのは事実です。しかし一方で、設立には費用や手続きが発生し、維持や運営にも責任が伴います。また、事業がまだ明確でない段階で会社を作ると、税金や社会保険の負担などで経営が困難な状態に陥る可能性もあります。
そこで今回は、とりあえず会社を作るのはアリ?という疑問に関して、
・会社設立の基礎知識とメリット、デメリットは?
・会社設立に必要な手続き、役立つサポートは?
・会社設立前に注意すべきポイントは?
など、法人化を検討している人に向けて分かりやすくまとめてみました。
このページで分かる事
まずは、会社設立の基礎知識、法人と個人との違いや会社の種類などについて詳しく解説します。
会社を設立するということは、法人としての新しい事業体を作ることを意味します。
個人事業主と異なり、法人は独立した法的存在として扱われ、事業活動や資金調達、税制面での優遇を受けられるケースもあります。
日本の新規法人設立件数は、年間約10万件以上にものぼると言われており、フリーランスとして活動していた人が、取引先の要請で法人化するケースも増えています。
多くの人が法人設立を選択する理由には、事業の信用度向上や節税効果などが挙げられます。
法人のほうが契約しやすく、事業規模を拡大する際にも有利になるためです。
会社を設立すること自体は比較的簡単ですが、その後の運営を見据えた準備が必要です。
税務申告や社会保険の手続き、資金調達の計画をしっかり立てておくことが成功の鍵となります。
法人と個人事業主では、運営や税制、責任範囲が大きく異なります。
法人化することで、事業の信用力が向上し、節税メリットも得られる可能性がありますが、運営コストや手続きが増える点には注意が必要です。
法人の税率は通常23.2%(中小企業の軽減税率適用時は15%)ですが、個人事業主の場合、累進課税により最大45%の税率が適用される可能性があります。
このため、一定以上の利益が見込める場合は、法人化による節税効果が期待できます。
一方で、社会保険の負担増や法人設立のコストが発生するため、慎重に判断する必要があります。
法人化することの最大のポイントは、「信用力の向上」と「税制面のメリット」を活かせるかどうかです。
自分の事業規模や将来の成長を考えた上で、法人化するかどうかを決めることが重要です。
会社を設立する際には、株式会社・合同会社など、いくつかの選択肢がありますが、それぞれに特徴があるため自身の事業スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
株式会社は資本金の出資者(株主)と経営者が分かれる仕組みがあり、信用力の高さが特徴です。
一方で、合同会社はシンプルな経営体制で、設立費用も安く抑えられるメリットがあります。
スタートアップ企業の多くは株式会社を選択する傾向にありますが、これは、投資家からの資金調達がしやすく、経営の透明性が確保されるためです。
一方、個人事業主が法人化する際には、合同会社を選択し、ランニングコストを抑えるケースも増えています。
どの法人形態を選ぶかは、事業の目的や成長計画によって異なります。
設立費用、運営のしやすさ、将来的な資金調達のしやすさなどを総合的に考慮して判断しましょう。
続いては、会社を設立することでどのようなメリットがあるかについて詳しく解説します。
法人を設立することで、取引先や金融機関からの信用力が高まります。
特に、大手企業との契約や融資を受ける際には、法人であることが有利に働くことが多いです。
法人の方が個人事業主よりも融資審査の通過率が高い傾向にあり、支払いサイトの延長や掛け売り取引も可能になるなど、法人であることが信頼性の証明になり、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。
フリーランスとして活動していた人が法人化することで、大手企業との直接契約が増えたというケースもあります。
このように、法人化による信用力の向上は、事業の拡大を目指す人にとって大きなメリットとなります。
法人の税率は一定ですが、個人事業主は累進課税で所得が増えるほど税率が上がるため、一定以上の収益がある場合に有利になります。
また、法人では役員報酬を設定できるため、所得を分散させることで節税効果を高めることができます。
さらに、法人では経費として認められる範囲が広がるため、事業にかかるコストを有効に節税対策に活用することもできます。
個人事業主のままだと借りられる金額に制限があることが多いですが、法人であれば事業計画に基づいた融資が受けやすくなり、金融機関や投資家からの資金調達がしやすくなります。
また、法人の方がスタートアップ向けの助成金・補助金も活用しやすいとされており、特に、創業融資では法人の方が審査に通りやすい傾向にあります。
法人化することで、資金調達の幅が広がり、事業をスムーズに拡大できる可能性があります。
法人化することで社会的な信用が増し、対外的なイメージが向上します。
特に、企業との取引が多い場合、法人であることが信頼性の指標となります。
取引条件が有利になることも多く、法人名義での契約が可能になり、個人よりも信用度が高くなる傾向があるため、長期的に事業を成長させるための基盤を作ることができます。
会社を設立する際には、デメリットやリスクについてもしっかりと理解しておく事が重要です。
会社を設立するには法人登記の手続きが必要であり、その際に登録免許税や定款の認証費用が発生します。
また、法人住民税の均等割は赤字でも毎年支払う必要があります。
株式会社を設立する場合にも、最低でも約25万円の費用が必要になり、設立後も社会保険料や税務申告の費用がかかるため、長期的な資金計画が求められます。
そのため、設立時にかかる費用だけでなく、維持費も考慮した上で会社設立を決めることが重要です。
事業を行わずに会社を放置すると、思わぬコストや法的リスクが発生します。
法人住民税の均等割は、たとえ利益がなくても支払い義務があり、東京都では年間7万円が課されます。
さらに、社会保険の加入義務が発生し、適用対象となる場合は従業員がいなくても社長個人の社会保険料の負担が発生します。
また、会社を廃業する際には解散登記や清算手続きが必要であり、弁護士や税理士に依頼すると追加の費用がかかることがあります。
事業を停止したまま放置していると、数年後に多額の住民税や社会保険料の未払いでトラブルになるといったケースもあるため、事業計画をしっかり立てた上で法人化することが重要です。
とりあえず会社を作ったものの、事業内容が明確でないと収益を上げるのが難しくなります。
法人を維持するためには、毎年の決算処理や税務申告が必要であり、事業が軌道に乗る前に負担がかかることがあります。
計画が曖昧なまま法人化した結果、ビジネスモデルの変更を余儀なくされるケースもあるため注意が必要です。
また、事業計画をしっかり立てずに法人化すると、資金繰りが悪化し、早期に解散せざるを得ない状況に陥る可能性もあります。
会社を設立する前に、事業の収益性や市場ニーズを十分に検討することが重要です。
法人を設立すると、税務署や自治体への届け出が必要になります。
法人税の申告や消費税の届出などを怠ると、罰則が発生することがあるため注意が必要です。
法人設立後に行うべき主な手続きは以下の通りです。
また、銀行口座を開設する際には事業内容が明確であることが求められるため、計画が不十分な場合は口座開設を断られることもあります。
スムーズに手続きを進めるためには、事前に準備を整えておくことが必要です。
会社を設立した後には、資金繰りや市場競争など、さまざまなリスクが発生します。
資金繰りが悪化し運転資金が確保できなくなると、最悪の場合倒産に至ることもあるめ、事業計画をしっかり立て、初期の資金調達や利益の確保を意識することが重要です。
また、競争が激しい市場では差別化が求められるため、マーケティング戦略を考えずに事業を開始すると、顧客を獲得できずに失敗する可能性があります。
法人化したからといってすぐに成功するわけではなく、継続的な経営努力が求められます。
年間500万円以上の副業収入がある場合、法人化することで税負担を軽減できるメリットがあり、近年、副業を法人化するケースが増えています。
一方で、副業のために法人を設立すると、本業との両立が難しくなるリスクもあります。
会社を設立することは手軽になりましたが、維持にはコストや手間がかかるため、慎重に判断することが求められます。
会社設立のメリット、デメリットについては十分ご理解頂けたでしょうか?ここからは、会社を設立する際の準備や手続きに関して詳しく解説していきます。
会社を作るには、事前に準備すべきことがいくつかあります。
まず事業内容を明確にし、会社の運営に必要な資金や計画を立てることが重要です。
資金計画が甘いと会社を作った後に維持できなくなるリスクがあり、新規法人の約30%が設立から3年以内に廃業しているというデータもあります。
この理由の多くが、資金不足や事業計画の不備であるため、法人化の前には十分な準備をすることが成功の鍵になります。
起業経験のない人がいきなり会社を設立した場合、資金繰りの管理や経理処理の負担が大きくなり、軌道に乗る前に撤退を余儀なくされるケースもあります。
事前に、開業資金やランニングコストを試算し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
会社を設立する際には、基本事項を決める必要があります。
基本事項の主な内容は、商号(会社名)、事業目的、資本金などです。
資本金は1円からでも設立可能ですが、資本金1円で会社を設立したものの信用不足で取引先が見つからず、結局増資を行うといったケースもあります。
そのため、実際の運営を考えると、ある程度の資金を用意しておくことが望ましいです。
会社を設立するには、「定款」という会社の基本ルールを定めた書類を作成する必要があります。
株式会社の場合は、公証役場で定款の認証を受けなければなりません。
公証役場での定款認証費用は約5万円かかりますが、合同会社の場合は認証が不要のためこの費用を節約できます。
定款の内容には、商号や事業目的、役員の構成などが記載されます。
定款の内容を十分に検討せずに設立した結果、事業拡大時に目的変更のため追加費用が発生したケースもあるため、将来的な事業展開を考慮し、事業目的は広めに設定しておく方が良いでしょう。
定款を作成した後、設立時の資本金を指定の口座に払い込む必要があります。
この資本金は、登記手続きの前に代表者個人の銀行口座へ振り込み、通帳の記録を保存しておく必要があります。
先程も申し上げたように、資本金の額は1円からでも設立可能ですが、実際には運転資金としてある程度の額を用意する方が良いでしょう。
必要に応じて資本金の額を増やし、初期の運営を安定させることが重要です。
会社を正式に設立するためには、法務局で法人登記の手続きを行う必要があります。
提出書類には、定款、登記申請書、代表取締役の印鑑証明書などが含まれます。
また、法人登記には登録免許税が必要で、株式会社の場合は最低15万円、合同会社では最低6万円の費用が必要です。
登記が完了すると法人として正式に認められ、会社の営業が可能になります。
登記書類の不備により申請が遅れ、会社の設立が予定より1カ月遅れたケースもあるため、手続きをスムーズに進めるためにも、事前に必要書類を準備し、不備がないか確認することが大切です。
会社を設立したら、法人名義の銀行口座を開設する必要があります。
法人銀行口座は、取引先への信用にも関わるため早めに準備しておくことが重要です。
しかし、最近では法人銀行口座の審査が厳しくなっており、事業計画が曖昧だったり実績がないと開設を拒否されるケースがあります。
特に、資本金が極端に少ない場合や事業の実態が不明確な場合は、口座開設が難しくなることがあります。
そのため、事業内容や売上計画を明確にし、口座開設に必要な書類を準備しておくことが求められます。
会社を設立した後は、税務署や自治体への届け出が必要になります。
法人税や消費税の申告に関する書類は期限内に提出することが求められます。
主な届け出には以下のようなものがあります。
青色申告の申請を忘れて節税メリットを受けられず、翌年の納税額が大幅に増えたという事例もあるため、設立後すぐに必要な手続きを確認し、適切に対応しましょう。
また、従業員を雇う場合は、社会保険や雇用保険の加入義務が発生します。
未加入のまま放置すると罰則を受ける可能性があるため、速やかに手続きを進める必要があります。
会社設立の手順や流れ、費用などに関しては以下の記事で詳しく解説していますので、そちらの記事も是非参考にして下さい。
【一人で会社を作る】かかる費用、手順を解説!【税理士監修】
ここでは、会社を設立する際に役立つサービス、専門家に相談するメリットなどについて詳しく解説します。
会社を設立する際には、専門家に相談することでスムーズに手続きを進めることができます。
税理士や行政書士は、会社設立に関する知識を持っており、必要な書類の作成や税務手続きをサポートしてくれます。
特に、税金や社会保険の手続きを正確に行うためには、専門家のアドバイスが不可欠です。
専門家に相談することで、会社設立の手続きを正確かつ迅速に進めることができ設立後の経営もスムーズにスタートできます。
会社設立を代行してくれるサービスを利用することで手続きを簡略化し、短期間で会社を作ることが可能です。
これらのサービスは、法人登記や定款作成を代行し、利用者は最低限の作業で設立手続きを完了できます。
特に、起業に慣れていない人にとって、専門的な知識を必要とせずに会社を設立できるのは大きなメリットです。
会社を設立する際には、資金調達が必要になる場合があります。
特に、事業を軌道に乗せるまでの間は運転資金が必要となるため、融資や助成金の活用が重要です。
例えば、政策金融公庫の創業融資などは、低金利で借りられるため初期費用の負担を軽減できます。
資金調達のサポートを受けることで、初期の広告費や運転資金を確保することができ、会社設立後の経営もスムーズに進めることができます。
近年、副業として小規模な事業を始めた後に法人化するケースが増えています。
副業から法人化する際には、適切なタイミングを見極め、法人化のメリットを最大限に活用することが重要です。
副業として事業を行っている人が年商500万円を超えた段階で法人化を検討するケースも多く、事業規模が大きくなるにつれて法人化を選択する人が増えています。
副業から法人化をサポートするサービスを利用することで、スムーズに会社を設立し、ビジネスを拡大することができます。
最後に、会社設立の前にしっかりとチェックしておきたいポイントについてまとめました。
会社を設立する際には、事業を継続できるかどうかを十分に検討することが重要です。
ビジネスモデルが不明確なまま会社を作ると、数年以内に廃業するリスクが高まります。
新規法人の廃業の主な理由は「収益モデルの未確立」とされています。
事業が軌道に乗る前に資金が尽きるケースが多いため、事業の持続性を十分に考える必要があります。
ビジネスモデルを確立し、安定した収益が見込めるようになった段階で法人化するのが理想的です。
会社を設立する前に、経営計画や資金繰りの見通しを立てることも重要です。
計画なしに起業すると、資金ショートを起こし、経営が行き詰まるリスクがあります。
計画が不十分な企業の廃業率は高い傾向にあり、逆に、事業計画をしっかり立てた企業は適切な資金管理ができ、安定した運営を続けることができています。
経営計画と資金繰りをしっかり考え、会社設立後に困らないように準備することが大切です。
法人化には最適なタイミングがあります。
事業が安定していない段階で法人化すると、税金や手続きの負担が増え、経営の負担が大きくなるため、法人化のタイミングを見極め、適切な時期に会社を設立することが成功の鍵です。
年間売上1,000万円を超えると消費税の課税対象となるため、法人化のメリットが大きくなるとされています。
そのため、売上1,000万円を超えた時がひとつのタイミングでもあります。。
会社を設立した後、思うように事業が進まない場合、休眠や解散の選択肢も考慮する必要があります。
法人を維持するだけでも費用がかかるため、撤退の判断も重要です。
会社設立前に最悪のケースも考慮し、休眠や解散の選択肢を知っておくことが大切です。
今回は、とりあえず会社を作るのはアリか?という疑問に関して詳しく解説してきました。とりあえず会社を作るという選択には、多くのメリットが存在するものの、コストや手続き、リスクなどの注意すべき点も少なくありません。また、法人化のタイミングや節税、資金調達などは慎重に判断する必要があり、会社設立後の経理や税務関係の知識も必要になってくるかと思います。法人化すべきか迷っている方、会社設立に関して不安や疑問をお持ちの方は、無料相談も行っている当事務所へ、是非お気軽にご相談ください。