
確定申告で間違いをしてしまった、あるいは間違えていたかもしれない…そんな不安を抱えている方へ、税理士の視点から正しい対処法と注意点をお伝えします。
このページで分かる事

確定申告のミスといっても、その内容はさまざまです。計算間違いや転記ミスのような単純なものから、制度の仕組みをよく理解せずに控除を適用してしまうケースまで、実務でよく目にするパターンをまとめました。
「制度の誤解」による申告ミスは、本人が間違いと気づきにくいぶん、発覚が遅れやすい傾向があります。特に控除の適用誤りは、追徴課税につながりやすいので注意が必要です。
医療費控除は「病気やケガの治療費」が対象ですが、対象かどうかの線引きを誤っているケースが多く見られます。たとえば、美容目的の歯列矯正や健康増進のためのサプリメントは原則として対象外ですが、子どもの成長に必要な矯正治療や、医師が処方した医薬品であれば対象になるなど、判断が難しいケースも少なくありません。
また、生命保険や健康保険から補填された金額は、医療費から差し引く必要があるにもかかわらず、そのまま控除額として申告してしまうミスもよくあります。対象外のものを含めて申告した場合、税務署から指摘を受ければ修正申告や追徴課税が発生する可能性があります。「かかったお金は全部控除できる」という思い込みは、間違いのもとになりやすいといえるでしょう。
ふるさと納税はワンストップ特例制度を使えば確定申告が不要ですが、6自治体以上に寄附した場合や、医療費控除など他の控除との併用で確定申告が必要になる場合は、ふるさと納税分も合わせて申告しなければなりません。この仕組みを知らずに、ワンストップ特例の申請だけで済んでいると思い込んでいるケースがあります。
その場合、寄附金控除が適用されないまま余分な税金を払い続けることになります。申告漏れで損をしていても税務署から指摘は来ないため、自分では気づきにくいのがこのミスの特徴です。払いすぎに気づいた場合は「更正の請求」で取り戻せる可能性があります。
扶養控除や配偶者控除には、所得要件があります。配偶者控除の場合、配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入なら103万円以下)でなければ適用できません。しかし、配偶者がパートやアルバイトで収入を得るようになったにもかかわらず、以前と同じように控除を申告し続けているケースがあります。
また、学生の子どもがアルバイトで年間103万円以上稼いだ場合も扶養から外れますが、親がそれを把握していないまま扶養控除を申告してしまうこともあります。この種のミスは支払調書やマイナンバーの照合によって税務署が把握しやすく、数年後に遡って追徴課税が発生するリスクもあります。毎年申告前に家族の収入状況を確認することが大切です。
給与所得者が副業で得た収入は、年間20万円を超えると原則として確定申告が必要です。しかし「少額だから大丈夫だろう」「会社にバレたくないから申告しなかった」というケースは、実務でも少なくありません。また、保険の満期返戻金や不動産の売却益なども一時所得として申告が必要ですが、「税金がかかるとは思わなかった」という方もいます。
副業収入の申告漏れは、支払調書や確定申告書の内容照合によって税務署が把握しやすいジャンルの一つです。少額だからといって放置すると、加算税や延滞税が上乗せされた状態で指摘を受けることになりかねません。不安がある場合は早めに専門家へ相談することをおすすめします。
▶ 副業で確定申告していない人は多い?バレない?現役税理士が解説

間違いに気づかないままでいると、いずれ税務署から連絡が来る可能性があります。そのとき問題になるのが、本税(本来納めるべき税額)だけでなく、加算税や延滞税といったペナルティが上乗せされることです。
放置期間が長くなるほど延滞税が積み上がります。「時効になればいい」と思っていると、思わぬ高額請求につながることがあるので注意が必要です。
税務署に申告内容の誤りが発覚した場合、本来納めるべき税額に加えて、いくつかのペナルティが課されます。まず「過少申告加算税」は、本税の10〜15%が上乗せされます。申告期限を過ぎて自主的に修正した場合は5%に軽減されるケースもありますが、税務調査後に発覚した場合は割合が上がります。
さらに「延滞税」は、本来の納付期限から実際の納付日までの日数に応じて発生します。延滞税の税率は最大約14.6%(2024年現在)と高く、放置期間が長くなればなるほど金額が膨らみます。たとえば、本税50万円を3年間放置した場合、延滞税だけで数万円単位になることもあります。「少し間違えただけ」のつもりでも、気づいたときには予想以上の出費になるリスクがあります。
税務調査は全ての納税者が対象になるわけではなく、申告内容に不自然な点がある場合や、売上と経費のバランスが極端な場合などに選ばれやすい傾向があります。たとえば、同業他社と比べて利益率が著しく低い、毎年赤字が続いている、申告書に記載漏れがある、といったケースは調査対象として目に留まりやすいとされています。
また、副業収入が支払調書として税務署に提出されているにもかかわらず確定申告に反映されていない場合は、コンピュータシステムの照合によって自動的に不一致が検出される仕組みがあります。調査に選ばれること自体は不正の確定ではありませんが、申告内容に問題があれば追徴課税に発展する可能性が高くなります。
単純なミスではなく、意図的に収入を隠したり、架空の経費を計上したりといった行為が認められた場合、通常の加算税より大幅に重い「重加算税」が課されます。過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%が本税に上乗せされます。
重加算税が課されると、延滞税とあわせて本税の1.5倍以上の金額を納付しなければならないケースもあります。さらに、悪質な脱税行為と認定された場合には、刑事罰(懲役や罰金)に発展することもあります。「税務署にバレなければいい」という考えは非常に危険です。故意かどうかの判断は税務署が行うため、意図せずとも悪質認定されるリスクがある点も覚えておく必要があります。

「税務署は申告内容をどうやって確認しているのか」「時効があるなら放置してもいいのでは」と考える方もいます。ただ実際には、税務署の情報収集は想像以上に広範囲にわたります。
「もう何年も経ったから大丈夫」とは言い切れません。悪質と見なされれば時効が7年に延長されるケースがあります。時効を待つ戦略は現実的ではありません。
企業や金融機関は、一定額以上の報酬や配当、不動産の売買に関する情報を「支払調書」として税務署に提出する義務があります。税務署はこの支払調書と確定申告書の内容をシステムで照合し、申告漏れや不一致がないかをチェックしています。
さらにマイナンバー制度の普及により、金融口座や各種所得情報が個人番号と紐づけられるようになり、複数の収入源を名寄せして把握する精度が年々高まっています。「副業の報酬は現金でもらっているから大丈夫」という認識は危険で、振込記録や取引先の帳簿を通じて把握されるケースも十分あり得ます。
国税の更正・決定(税務署が申告内容を修正できる期間)は、原則として申告期限から5年間とされています。つまり、5年を過ぎた申告内容については、通常は追徴課税が行われないことになります。
ただし、仮装・隠蔽など悪質な行為が伴う場合は7年に延長されます。また、無申告の場合も5年の除斥期間が適用されますが、悪意があると判断されれば7年が適用される可能性があります。「5年待てば時効」という考え方は成立しない場面も多く、問題を先送りにするリスクは相当大きいと言えます。
申告内容に問題があっても、必ずしも税務署から連絡が来るわけではありません。特に「払いすぎ」のケース(控除の申告漏れなど)については、税務署から自発的に還付の案内が来ることはほとんどなく、納税者が自ら気づいて手続きをしなければ損をしたまま終わります。
一方で「少なく払っている」ケースについては、支払調書との照合で不一致が発見された場合や、一定のリスク基準に引っかかった場合に税務署から「お尋ね文書」が届くことがあります。この文書を無視すると、税務調査に発展する可能性が高まります。届いた場合はすぐに内容を確認し、必要であれば税理士に相談しながら対応することを強くおすすめします。

申告に誤りがあることに気づいた場合、状況に応じて手続きの方法が異なります。「訂正申告」「更正の請求」「修正申告」の3つを使い分けることが基本です。慌てず、状況を正確に整理してから対応しましょう。
間違いに気づいたタイミングと内容によって、取るべき手続きが変わります。自己判断で動く前に、手続きの種類と期限を確認することが大切です。
確定申告の法定申告期限(原則として翌年3月15日)内に間違いに気づいた場合、正しい内容で申告書を再度提出することで上書きができます。これを「訂正申告」と呼びます。e-Taxであれば再送信するだけで対応でき、書面申告の場合は「訂正申告」と記載した上で再提出します。
申告期限内の訂正は原則としてペナルティが発生しません。期限内であれば最もシンプルに解決できる方法です。「提出したら終わり」ではなく、提出後も内容を見直す習慣をつけておくと、期限内に気づいて訂正できる可能性が高まります。
申告期限後に「税金を多く払いすぎていた」と気づいた場合は、「更正の請求」という手続きで還付を求めることができます。請求できる期間は、法定申告期限から原則5年以内です。控除を申告し忘れた、所得を二重計上していた、といった場合に有効な手続きです。
更正の請求書を税務署に提出すると、税務署が内容を確認し、問題なければ還付金が振り込まれます。5年以内という期限があるため、心当たりがある場合は早めに確認することをおすすめします。ふるさと納税や医療費控除の申告漏れに後から気づいた場合も、この手続きを使って取り戻せる可能性があります。
申告期限後に「税金を少なく払っていた(申告漏れがあった)」と気づいた場合は、「修正申告」を行う必要があります。修正申告書を作成して提出し、不足分の税額を納付します。修正申告は、税務調査が始まる前であれば自分のタイミングで提出することができます。
修正申告後は原則として「不服申立て(再調査の請求)」ができなくなるため、申告内容の正確な把握が必要です。複雑なケースでは、税理士に内容を確認してもらってから提出するのが安心です。修正申告に際しても過少申告加算税や延滞税が発生しますが、調査後よりも自主的に行った方が加算税の割合が低くなるケースがあります。
税務調査が入る前に自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税が軽減されるか、または免除されるケースがあります。税務調査の事前通知を受けた後でも、調査開始前に修正申告をすれば加算税が5%に抑えられる場合があります(通常は10〜15%)。
「調査が来てから動けばいい」ではなく、気づいた時点で早めに動く方が経済的なメリットがあります。加算税の軽減制度はあくまで自主性が前提ですので、指摘を受けてからでは適用されません。万一の際に備え、申告後も書類や記録をきちんと保管しておくことが重要です。
▶ 税務署に相談するメリット・デメリットは?確定申告の相談可能?

間違いへの対処も大切ですが、そもそもミスを出さないことが最善策です。提出前の確認や申告ツールの活用、そして専門家への相談を組み合わせることで、ミスを大幅に減らすことができます。
確定申告のミスは「知識の不足」から起きることが多いです。提出前の見直しと、不安なポイントの早期確認が、最大の予防策になります。
確定申告書を提出する前に、以下の点を一度確認しておくことをおすすめします。慌てて提出すると転記ミスや記入漏れが起きやすいため、余裕を持ったスケジュールで作業することも大切です。
このチェックを提出の数日前に行うことで、期限内の訂正が間に合う可能性が高まります。特に収入が複数ある方や、控除の種類が多い方は念入りに確認する習慣をつけておきましょう。
e-Taxや確定申告ソフトを使うと、計算ミスや転記ミスを大幅に減らすことができます。入力した数字を自動で集計してくれるため、手書きで起きやすい「たし算を間違えた」「別の欄に転記してしまった」といったミスをほぼ防ぐことができます。
また、必要な入力欄が空白になっていると警告が出る機能や、対象となる控除の案内が表示される機能を持つソフトもあります。ただしソフトはあくまでツールであり、入力する「元の数字」が正しくなければ誤申告を防ぐことはできません。原始資料(領収書・源泉徴収票・支払調書など)をきちんと整理した上で入力することが前提です。ソフトを過信せず、最終確認は必ず人の目で行うことをおすすめします。
「自分の申告内容が正しいかどうか自信がない」「過去の申告に漏れがあったかもしれない」と感じている場合は、税理士に相談することが最も確実な解決策です。税理士は申告内容のレビューから修正申告の代行まで対応できますし、状況によっては税務署との交渉をサポートすることもできます。
早めに相談すれば、問題が小さいうちに対処できる可能性が高まります。反対に放置すれば、延滞税の積み上がりや税務調査のリスクが高まるだけです。「まだ大丈夫」と先送りにせず、気になることがあれば今すぐ専門家に確認することをおすすめします。

Yahoo!知恵袋などには、確定申告の間違いに関する質問が多数寄せられています。ここでは特によく見られる質問を取り上げ、税理士の視点から回答します。
「自分だけが気になっていること」が、実は多くの人に共通する疑問だったりします。当てはまる質問があれば、ぜひ参考にしてみてください。
必ずしも連絡が来るとは限りません。税務署からの接触があるかどうかは、申告漏れの金額・種類・税務署のリソースなど複数の要因によります。小額で他の申告内容も問題のない場合、特に何も言われないまま終わることもあります。
ただし、「連絡が来なかった」イコール「問題なかった」ではありません。支払調書との不一致が後から発覚することもありますし、税務調査は申告から数年後に行われるケースもあります。「何も来ていないから安心」ではなく、自発的に確認・修正する姿勢が重要です。
まず間違いの内容を確認し、「多く払っていた(税金が増えていた)」のか「少なく払っていた(税金が減っていた)」のかを整理してください。多く払っていた場合は「更正の請求」、少なく払っていた場合は「修正申告」が必要です。
申告期限内であれば「訂正申告」として再提出するだけで対応できます。期限外の場合は手続きが異なりますが、いずれも早めに動く方が延滞税の増加や加算税の悪化を防ぐことにつながります。迷う場合は税務署や税理士に相談して方向性を確認してから動くと安心です。
副業収入の申告漏れに気づいた場合は、速やかに修正申告を行うことが必要です。税務調査が来る前に自主的に申告することで、過少申告加算税が軽減される場合があります。申告に必要な書類(源泉徴収票・支払明細など)を揃えた上で、修正申告書を作成して提出します。
「バレてから対応すればいい」と考える方もいますが、調査後の修正申告は加算税が高くなるリスクがあります。また、支払調書の照合によって副業収入は税務署が把握しやすい情報の一つです。気づいた段階で早めに対処することが、最終的な納付額を抑えることにつながります。
更正の請求は、法定申告期限(原則として確定申告の翌年3月15日)から5年以内に行う必要があります。たとえば2020年分(申告期限2021年3月15日)の確定申告であれば、2026年3月15日までが期限です。
この期限を過ぎると、たとえ払いすぎていても還付を受けることができなくなります。「まだ時間がある」と思っていても、気づいたときに早めに行動することを強くおすすめします。申告内容の確認に時間がかかることもあるため、余裕を持って手続きを開始することが大切です。

この記事では、確定申告の間違いに気づかないまま放置した場合のリスクと、正しい対処法について解説しました。最後に要点を整理しておきます。
確定申告の間違いは誰にでも起こり得ます。大切なのは、気づいたときに正しく対処することです。「税務署から何も連絡が来ていないから大丈夫」という判断は、後々大きなリスクにつながる可能性があります。少しでも不安があれば、税理士への早期相談を検討してみてください。
この記事の監修者
野村 和也(のむら かずや)
税理士|野村和也税理士事務所 代表
大阪府守口市を拠点に、創業・新規開業支援を専門とする税理士事務所。個人事業主から法人まで幅広い税務・会計をサポート。無料相談対応可能。
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